
2018年の6月15日から施行が決まっている住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)。
そこからちょうど3ヶ月前の3月15日には民泊物件の届け出受付が開始されます。これまでは旅館業で簡易宿所営業の許可を得るか、大田区や大阪市など一部地域のみ認められていた特区民泊の許可を得ることが必要でした。しかし、民泊新法が施行されてからは届出を行なうことで、合法的に民泊の営業が可能になります。
民泊新法では、国土交通省と厚生労働省から施行される内容をベースとして、各自治体ごとに独自の規制を行なうことが認められています。これに伴い、営業日数や営業地域に関して独自に規制を制定、または検討を始める自治体が少しずつ増えてきました。既存の宿泊施設への影響や、住民の生活を守ることが主な理由です。
今回は、民泊新法を踏まえて規制を行うことが予測される自治体について紹介します。皆さんが所持する物件は自治体ごとに規制がかけられる地域にあるか、民泊事業を検討されている方は本格的に民泊が始まる前に確認してください。
民泊新法を受けて東京23区は各自対応を公表
民泊新法の施行に伴い、宿泊日数や地域に関して独自に規制の骨子案を出している自治体が出てきています。一部民泊の営業を認めない地域もありますが、平日の営業を規制する地域がほとんどです。
都道府県 | 市区町村 | 規制内容 | 背景 |
東京 | 都内全域 | 国が発表したガイドラインを具体化 | 住宅宿泊事業の適正な実施運営を確保し、旅行者の宿泊需要に的確に対応するため |
東京 | 新宿区 | 住宅専用地域では営業日数が156日に制限 | 生活環境の悪化を防止するため |
東京 | 世田谷区 | 住宅専用地域では営業日数が106日に制限 | 生活環境の悪化を防止するため |
東京 | 大田区 | 住宅専用地域での営業を完全規制 | 特区民泊での規制内容との矛盾を回避するため |
東京 | 杉並区 | 住宅専用地域では営業日数が156日に制限 | 生活環境の悪化防止と観光事業の推進のため |
東京 | 練馬区 | 住宅専用地域では営業日数が156日に制限 | 生活環境の悪化を防止するため |
東京 | 文京区 | 住宅専用地域、文教地区で平日の営業を規制 | 生活環境悪化の防止と、観光客と近隣住民のトラブル防止のため |
東京 | 千代田区 | 管理不在型の民泊は営業が不可能に | 生活環境悪化の防止と旅行者の安全を維持するため |
東京 | 中央区 | 全域で平日の営業を規制 | 生活環境悪化を防止するため |
東京 | 目黒区 | 区内全域で営業日数を104日間に制限 | 良好かつ閑静な住環境を維持していくため |
東京 | 中野区 | 平日の民泊禁止と対面での確認を義務化 | 事業の適正な運営を図るとともに区民の安全と安心を確保するため |
東京 | 江東区 | 区内全域で平日の営業に制限 | 中高層住居専用地域の良好な住環境を守るため |
東京 | 台東区 | 家主不在型の民泊は平日の営業が制限 | 保育園、教育施設が区内に多いため、全域規制対象とする |
東京 | 港区 | 家主不在型の民泊営業を一部期間制限 | 近隣トラブルやなりすましによる宿泊防止のため |
東京 | 荒川区 | 区内全域で平日の営業を制限 | 区全体に人口が密集しているため、全域を制限する |
東京 | 板橋区 | 家主不在型民泊は住居専用地域で平日の営業を制限 | 観光事業が催されるため日曜日も制限に |
東京 | 墨田区 | 営業区域や宿泊日数の制限なし | 緊急時のトラブルには原則30分以内に駆けつけ |
東京 | 渋谷区 | 住居専用地域と文教地区は各季節の長期休暇期間のみの営業に | 区民の生活環境への悪影響の防止と子どもが安心して生活できる環境を確保するため |
東京 | 品川区 | 一部地域を除いて月曜正午〜土曜正午まで民泊営業を禁止 | 商業地域または第一種文教地区を除いて規制対象に |
東京 | 足立区 | 住居専用地域では平日の営業が規制 | 12/31から1/3も営業不可に |
東京 | 北区 | 特に規制はなし | 北区としての民泊ガイドラインは公表 |
東京 | 豊島区 | 営業日数などの規制なし | 住居と商店街が混在している地域が多くそれが特性としている |
東京 | 葛飾区 | 営業日数などの規制はなし | 葛飾区としての民泊ガイドラインは公表 |
東京 | 江戸川区 | 営業日数などの規制はなし | 江戸川区としての民泊ガイドラインは公表 |
神奈川 | 県全域 | 箱根町の別荘地で民泊の営業日を規制 | 平穏な住環境の維持のため、民泊を促進するとして他地域では規制なし |
神奈川 | 横浜市 | 低層住宅専用地域での営業を156日に制限 | 居住地としての都市ブランドを保つため |
各地域の条例をもとに、規制内容についても詳しく触れたいと思います。
首都圏の各自治体が公表した民泊新法に関わる条例とは?
東京都
- 国が公表したガイドラインよりもより詳細化されたガイドラインを発表
下記にある通り、各自治体ごとに他の地域よりも抜きん出て自治体ごとの条例が公表されている東京都。その東京都から、2018年2月2日に「住宅宿泊事業の適正な実施運営の確保や届出手続の明確化」を目的として、住宅宿泊事業のガイドライン案が公表されました。
今回、東京都が公表したガイドライン案は、昨年末に国が公表したガイドラインとは異なります。
国が公表したガイドラインについての詳細はこちらから
東京都が公表したガイドライン案については大きく分けて5つの項目があります。以下の通りです。
事業を営もうとする者に対する事前準備の指導
事業を営もうとする者が行う届出に関する事項
住宅宿泊事業者の業務に関する指導
住宅宿泊事業者に対する監督
関係機関との連携
東京都のサイトにあるガイドライン案のページを確認することで、東京都が独自に定めたガイドラインについて確認することができます。
例としていくつかあげると、民泊の営業を検討している人に対して「東京都の届出窓口において事前相談を受けること」「事業を営もうとする住宅の安全確保措置」「消防機関をはじめ関係機関等との相談・調整」など、事前に運営を行う人がするべき事項が追記されています。
また、提出する書類についても以下のような内容が追記されています。
法定の届出書類に加え、以下の書類の添付すること(※)
- (1) 消防機関に対し、消防法令の適合状況について相談等を行った旨を証する書類
- (2) 届出住宅の安全確保に関する国土交通大臣告示との適合状況チェックリスト
事前周知を行った周辺住民等に対し、届出番号及び届出年月日について周知すること
届出がなされた住宅宿泊事業に係る情報に関して、東京都は以下のとおり取り扱うこととする。
(1) 事業の適正な運営を確保するため、必要に応じて、東京都各関係部局、警察機関、消防機関及び市町村等と情報を共有する。
(2) 東京都に対して事業に関する情報開示請求等があった場合に、東京都が請求者に対し、当該情報について提供する。
(3) 届出者の同意に基づき、事業に関する情報(届出日、届出番号及び届出住宅の所在地)をホームページ等に公開する。
消防機関に対して相談を行なったことを証明する書類や、安全確保に関するチェックリストなど、よりゲストに対する安全面について書面上を通して厳重に確認されます。届出がなされた物件の情報についても各機関に共有されるとのことです。
他にも、苦情が多い物件や地域や東京都が主催する研修会に参加していないオーナーの物件については、優先的に現地調査が行われ安全面や生活環境の保護が行われるようです。
以下にある各自治体ごとの条例にあわせて、東京都内で民泊を行う際には東京都のガイドラインについても気をつけましょう。
新宿区
- 住居専用地域では、平日の民泊営業に制限有り、156日の営業に
民泊事業の拡大化を予想して、2016年から「新宿区民泊問題対応検討会議」を行なうなど、他の自治体よりも動きの早かった新宿区。民泊新法施行後には、民泊に関する規制案「新宿区ルール」を発表しました。
住居専用地域での民泊事業を規制するもので、該当地域では月曜日の正午から金曜日の正午までは営業ができなくなります。都内でも特に民泊物件数の多い地域のため民泊新法による影響も大きく、地域の住民の生活環境悪化を防止するのが主な理由であると考えられます。骨子案にも、生活環境悪化の防止が義務として書かれています。
世田谷区
- 住居専用地域での営業に規制、新宿区より少ない106日に
区面積全体のうち、80%弱が住居専用地域で占める世田谷区では、新宿区よりもさらに厳しい規制案が敷かれています。住居専用地域の営業は、土曜日の正午から月曜日の正午までです。(土日以外の祝日では、当日正午から翌日正午までの営業が可能。)
現在も開発が進んでいる街もあり、住む場所としての世田谷ブランドはまだまだ健在です。そのため、民泊による騒音問題やゴミ問題に対しても敏感なようです。
※3/12 更新
2018年3月1日、世田谷区は事前に募集したパブリックコメントを受けて、条例の一部を変更しました。
① 住居専用地域では、原則として月曜日の正午から土曜日の正午まで(祝日の正午
から翌日の正午までの期間を除く。)の住宅宿泊事業の実施を制限。
② ①の例外として、「制限する期間を緩和しても区民の生活環境が悪化するおそれが
ないと区長が認める区域」においては、当該期間を変更することができる。
※下線部が新たに追加された項目
これにより住居専用地域においても、一部地域では通年を通しての営業または営業可能な日数の拡大が予測されます。また、この条例により指定された地域、または範囲外とされた地域でも、1年後に条例の施行状況について検討が行われるため、その結果次第では措置が変わる可能性があります。
大田区
- 民泊は旅館業が可能な地域でのみ運営が可能
日本で一番早く特区民泊を導入し、民泊の普及を推進してきた大田区ですが、民泊新法施行後の大田区の規制は他の地域よりも規制が厳しくなっています。
住居専用地域での民泊運営の一切が禁止されるため、民泊事業への新規参入のハードルは高くなり、住宅地の物件で活用しきれていない物件の再利用など、民泊のメリットも失われる形です。
条例の詳細は大田区HPに掲載されている資料から確認することができます。
しかし、この規制については、国からも好ましくない規制だとの意見があった上、大田区の条例内でも、
区は、この条例の施行後2年以内に、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(参考:大田区住宅宿泊事業法施行条例)
と記しており、民泊新法施行後の状態を見て条例の変更なども予想されます。
杉並区
- 住居専用地域で平日の民泊運営に規制、観光事業の推進も目的
渋谷区・新宿区と隣接しており、都心部へのアクセスも優れている杉並区。新宿区と同様に、住居専用地域において、月曜正午から金曜正午までの民泊の営業を規制する条例が2018年3月2日に可決されました。杉並区HPに掲載されている条例には以下のような記載があります。
第2条
都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に掲げる第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域の区域において、月曜日の正午から金曜日の正午までの期間(国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日の前日の正午から当該休日の翌日の正午までの期間を除く。)においては、住宅宿泊事業(法第11条第1項第2号に該当する場合における同号の届出住宅に係るものに限る。)を実施してはならない。
2
法第2条第5項に規定する届出住宅を構成する建築物の敷地が前項の規定による制限を受ける区域の内外にわたる場合で、その敷地の過半が当該区域内に存するときは、当該届出住宅は、当該区域内にあるものとみなして、前項の規定を適用する。
自治体の方針としては生活環境の悪化を防止するため規制は行う一方で、民泊を活用しインバウンド需要の取り込みを目指すとのことです。
練馬区
- 新宿区などと同様に住居専用地域では平日の営業に制限
池袋までのアクセスが良く、ベッドタウンの印象が強い練馬区。新宿区をはじめとした他の区と同じく、住居専用地域において月曜の正午から金曜の正午まで営業を条例で規制することとなりました。以下の内容が練馬区HPに記載されています。
練馬区では、住居専用地域において住宅宿泊事業の実施期間に制限をかけています。
住居専用地域の場合は、住宅宿泊事業の実施期間に制限がかかります。
- 月曜日の正午から金曜日の正午は営業できません。
- 「金曜日の正午から月曜日の正午まで」および「祝日の前日の正午から祝日の翌日の正午まで」の期間は営業出来ます。
- 建物が建っている土地の過半が住居専用地域の場合は、上記の制限がかかります。
しかし、練馬区は住居専用地域が他の区と比べても多いため、既存の物件で民泊を運用しようとされている方には大きな影響が出ると考えられるでしょう。
文京区
- 住居専用地域をはじめ、準工業地域や文教地区でも平日の民泊に規制
主要な区と隣接しており、地下鉄やバスなどの交通機関も多い文京区。23区内で最も治安がいいエリアと称されることもあり、日曜日正午から金曜日正午までの間、民泊事業が規制されます。
条例文は以下の通りです。
第七条
法第十八条の規定により住宅宿泊事業を実施する期間を制限する区域(以下「制限区域」という。)は、次に掲げるとおりとする。一
都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号に規定する第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域及び準工業地域二
東京都文教地区建築条例(昭和二十五年東京都条例第八十八号)に規定する第一種文教地区及び第二種文教地区2
届出住宅の敷地が制限区域の内外にわたる場合において、当該敷地の過半が制限区域に属するときは、当該敷地の全部を制限区域とみなす。3
制限区域においては、日曜日の正午から金曜日の正午までは住宅宿泊事業を実施することができない。(近隣住民への周知等)(参考:文京区住宅宿泊事業の運営に関する条例)
規制がかかるエリアが他の区よりも多いのが特徴です。第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準工業地域のほか、学校などの施設が建てられている第一種文教地区と第二種文教地区も規制の対象となります。
千代田区
- 小中学校の周辺や人口密集地域で民泊運用を規制
皇居や秋葉原など観光目的の人はもちろん、丸の内などビジネス目的の長期滞在でも民泊需要が考えられる千代田区。管理形態によって規制の内容が大きく異なります。下記の表をご覧ください。
管理形態 | 文教地区等 | 学校等周辺 | 人口が密集している区域 | 人口が密集していない区域 |
---|---|---|---|---|
家主居住型 | 日曜昼~金曜昼不可 | 日曜昼~金曜昼不可 | 180日(泊) | 180日(泊) |
家主不在型(管理者常駐型) | 日曜昼~金曜昼不可 | 日曜昼~金曜昼不可 | 180日(泊) | 180日(泊) |
家主不在型(管理者駆けつけ型) | 全日不可 | 全日不可 | 日曜昼~金曜昼不可 | 180日(泊) |
家主不在型(駆けつけ要件を満たさない管理者) | 全日不可 | 全日不可 | 全日不可 | 全日不可 |
当初公表された条例案からは少し内容が異なり、文教地区や学校周辺では家主不在型の民泊の営業ができなくなります。さらに、
家主居住型・管理者が常駐している住宅
文教地区、学校等周辺区域では日曜日の正午から金曜日の正午まで民泊事業はできません。
それ以外の区域では法律上限の180日(泊)、民泊事業ができます。
家主不在で、管理者が常駐できない場合
管理者は該当住宅から700メートル以内に事務所を設け、相談や苦情の通報があった時は10分以内に駆けつけなければなりません。
管理者が通報を受けて10分以内に駆けつけることができない住宅は、千代田区内全域で民泊事業はできません。(参考:千代田区住宅宿泊事業の実施に関する条例)
との記載もあり、駆けつけサービスなどの対応がない場合、千代田区では民泊の営業が困難になっています。
中央区
- 中央区全域で平日の民泊営業を制限
老舗の高級百貨店や銀座、新橋、月島などビジネス街でありながら多くの観光地を持つ中央区。2017年12月25日に発表された骨子案では商業地域、準工業地域を含めた中央区全域という広範囲において、月曜日の正午から土曜日の正午までの平日営業が規制される方針が出ました。
2018年3月10日、中央区は当初公表していた条例案の通り、中央区内全域で平日の民泊営業を規制する条例を公表しました。
宿泊期間を限定します
本区は、区内全域で事業所と住宅が共存し、多くの方がマンションに居住しています。居住者以外の人が多数出入りすることで防犯機能の低下など区民の方々の生活環境が悪化しないよう区内全域を制限区域とします。この制限区域では、通勤などで区民が不在となることが多い平日の民泊事業の実施を制限し、区内全域で土曜正午から月曜正午の宿泊のみを認めます。
目黒区
- 区内全域で民泊を規制、民泊申請方法にも規制
住宅街が他の区と比べて多い目黒区。他の区の規制では、住居専用地域や文教地区などのみ規制対象とする自治体が多いですが、目黒区では区内全域で日曜日の正午から金曜日の正午まで民泊の運用が規制され、上限が年間104日になります。
住宅宿泊事業実施の制限(法第18条関係)
目黒区内の全域において、日曜日の午後0時から金曜日の午前12時までの週5日間は、住宅宿泊事業を実施できません。
さらに、民泊事業を行う際の申請にも規制があり注意が必要です。
目黒区内での住宅宿泊事業(民泊サービス)を行う場合の届出は、必ず生活衛生課に事前相談をお願いします
目黒区では、「民泊制度運営システム」を利用しての、住宅宿泊事業の届出はできません。目黒区内での住宅宿泊事業(民泊サービス)を行う場合の届出は紙媒体のみとなります。また、届出に際して事前相談を行っておりますので、必ず生活衛生課に事前相談をお願いします。
区内全域を規制する背景として、区全体のうち80%以上が住居系のエリアであること、商業地域にも住居が混在していたり準工業地域にも住宅地としての都市利用が進んでいることがあげられています。
中野区
- 住居専用地域内の規制に加え、宿泊者名簿の作成を義務化
新宿をはじめ都心へのアクセスもよく、中野ブロードウェイなど観光地としても注目される中野区。民泊事業の適切な運営を図るとともに、区民の安全及び安心を維持することを目的として中野区でも独自の規制を定めました。
中野区HPには以下の記載があります。
住宅宿泊事業(民泊)を実施する区域と期間が制限されています。
○制限する区域
都市計画法第8条第1項第1号に規定する用途地域のうち、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域に該当する区域○制限する期間
月曜日の正午から金曜日の正午まで(国民の祝日の正午から翌日の正午までの期間を除く)宿泊者名簿の作成について
○宿泊者と対面し、当該宿泊者から提示された本人確認ができる書類と照合するなど適切な方法により本人確認を行い、宿泊者名簿を作成してください。
○宿泊者が日本国内に住所を有しない者であるときは、パスポートの写しを宿泊者名簿とともに保管してください。
独自の規制内容として、本人確認とそれによる宿泊者の名簿の作成があります。対面または適切だと認められる遠隔での確認対応が必要です。
遠隔でのチェックイン代行サービスについては、以下の記事にてまとめております。こちらもあわせてご覧ください。
江東区
- 区内全域で平日の民泊事業の実施が規制
多くの地域で低層住居専用地域内での規制が行なわれる中、江東区は少し形が異なり、当初公表された条例案では第一種中高層住宅専用地域内でのみ、民泊事業の規制が行なわれる予定でした。
しかし、その後確定した条例では区内全域への規制に変わっています。
第8条
法第18条の規定により住宅宿泊事業の実施を制限する区域(以下「制限区域」という。)は、区内の全域とする。2
制限区域における住宅宿泊事業の実施を制限する期間は、月曜日の正午から土曜日の正午まで(国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に定める休日の正午から翌日の正午までを除く。)とする。
この規制の理由としては、「住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関し必要な事項を定めることにより、住宅宿泊事業に起因する事象による生活環境の悪化を防止することを目的」としています。
台東区
- 平日に区内全域で家主不在型の民泊が営業制限、約120日間に短縮
浅草や上野など観光地もありアクセスがよく、民泊を行うのにはうってつけの台東区。2018年1月31日に最後のルールづくりに向けた検討会が終了し、事業の実施制限等が決められました。
台東区では、区内全域において、月曜日の正午から土曜日の正午(祝日の正午からその翌日正午、12/30~1/3は除く)の間民泊の営業が規制されます。第3回台東区住宅宿泊事業検討会配布資料では、その理由を以下のように説明しています。
実施制限の理由
台東区は、約10平方キロメートルの面積に109か所の幼稚園や保育施設、小中学校、高等学校及び大学が区内全域に林立しており、これらの教育・保育環境を維持するため、区内全域を制限対象区域とする。
また、家主居住型に比較して、家主不在型の住宅宿泊事業は、事業者が不在のため、 騒音、ごみ出し等による近隣とのトラブルの発生、成りすましによる宿泊等の危険性が高いこと、近隣住民からの苦情への迅速な対応や災害発生時の宿泊者に対する避難誘導等が困難であること等から、実施期間の制限をすることとする。
(参考:第3回台東区住宅宿泊事業検討会配布資料)
しかし、家主不在型の物件でも管理者常駐型(住宅宿泊事業者又は管理業者が、宿泊者が滞在する間、届出住宅内、届出住宅と同一の建築物内、届出住宅と同一の敷地内にある建築物内、届出住宅に隣接している建築物内のいづれかに管理者を常駐させているもの)の場合は上記の制限がなくなると記載されています。
港区
- 家主不在型の場合、住居専用地域での営業が春季・夏季・冬季の一部に制限
六本木や赤坂など、今現在でも訪日外国人向けの民泊物件が多数存在する港区。2018年3月29日に「港区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」が公表され、正式に住宅宿泊事業を制限する区間および地域が定められました。
条例は下記の通りです。
第五条
(住宅宿泊事業を制限する区域及び期間)
法第十八条の規定による条例で定める家主不在型住宅宿泊事業及び家主居住型住宅宿泊事業の実施の制限は、次項から第五項までに定めるとおりとする。2
家主不在型住宅宿泊事業の実施を制限する区域は、次に掲げる区域とする。
一 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号に規定する第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域
二 東京都文教地区建築条例(昭和二十五年東京都条例第八十八号)に規定する文教地区3
届出住宅を構成する建築物の敷地が、前項の規定により制限を受ける区域の内外にわたる場合においては、その敷地の全部について、敷地の過半の属する区域の規定を適用する。4
第二項各号に掲げる区域において家主不在型住宅宿泊事業の実施を制限する期間は、一月十一日正午から三月二十日正午まで、四月十一日正午から七月十日正午まで及び九月一日正午から十二月二十日正午までとする。5
家主居住型住宅宿泊事業については、実施の制限は行わないものとする。
当初予定されていた通り、住居専用地域及び文教地区において、家主不在型の民泊物件は住環境の維持を理由として民泊の営業が制限されます。平日または祝日の区切りではなく日程により規制が行われます。
規制される期間は冬季(1/11~3/20)、春季(4/11~7/10)、秋季(9/1~12/20)の3期です。
家主滞在型の民泊については以上の規制からは除外されます。
荒川区
- 区内全域で月曜日正午から土曜日正午までの間民泊が制限される
都内の主要地域までのアクセスもよく地価も安いため、今後民泊物件の増加が見込まれる荒川区ですが、区内全域において民泊の営業が制限される見込みです。
住宅宿泊事業の実施の制限
区内全域において、月曜正午から土曜正午まで(祝日の正午から翌日正午 までを除く)の間、住宅宿泊事業を実施できないことを定めます。
参考
1年間の住宅宿泊事業の実施可能日数は、115日程度となります。 祝日の影響で実施可能日数は年によって変わります。
上記の通り、区内の全域において平日全日営業が規制されます。その理由として、荒川区は人口の密集度(人口密度、全国第3位)をあげています。加えて、標識の設置や説明会の実施など、地域の安全・安心の向上及び質の高い宿泊サービスの提供を確保するため、荒川区旅館業法施行条例の一部改正も予定されています。
板橋区
- 日曜の正午から金曜正午までの間、住居専用地域において営業が制限
東武東上線や都営三田線が通っており、池袋をはじめとした都心の主要地へのアクセスがいい板橋区。民泊に関する条例案が公表され「区民の生活環境に十分配慮しながら、適切な事業活動を求めるため」として、一部制限が課されました。内容は以下の通りです。
(1)制限する区域
良好な住居の環境を保護するため、住居専用地域(第一種低層、第二種低層、第一種中高層、第二種中高層)を制限区域とする。
(2)制限する期間
平日の住環境を保護するため及びいたばし花火大会や板橋区民まつりをはじめとした観光事業が週末に催されることが多いことから、日曜正午から金曜正午までを規制する。(ただし国民の祝日の前日を除く。)
(3)その他
法の趣旨である必要最低限の規制とするため、住宅宿泊事業者が自ら住宅宿泊管理業務を行うもの(家主居住型)など苦情等に即時に対応できるものは規制の対象外とする。
他の自治体と異なるのは制限する区間です。観光事業が多数行われるとして、日曜の正午から規制が行われます。その一方で、家主不在型でも管理業者が管理物件に近いなど迅速に対応できる物件は規制の対象外とされる予定です。
墨田区
- 宿泊日数に規制はなし、原則30分以内に駆けつけ対応を
両国国技館や東京スカイツリーを有し、国内外から観光スポットとして足を運ぶ人が多い墨田区。2018年3月16日に「住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン」を公表しました。他の区とは違い、条例ではなくガイドラインであるため営業日数などの規制はありません。注目すべき点としては、
(2)住宅宿泊管理業者との契約の締結
⑤ 委託を行おうとする住宅宿泊管理業者が、届出住宅へ速やかに駆けつけることが可能な体制を有しているか、確認した上で委託すること。
特に、苦情があってから現地に赴くまでの時間は、30分以内を目安とする。ただし、交通手段の状況等により現地に赴くまでに時間を要することが想定される場合は、60分以内を目安とする。
の部分です。管理を委託する運営代行業者がトラブル時にどのように対応するかについては確認が必要になります。都心へのアクセスもよく、区内にも観光地があるため今後民泊を行う土地として注目を浴びるかもしれません。
渋谷区
- 住居専用地域と文教地区では春・夏・冬の長期休暇期間を除き営業が禁止に
原宿や渋谷といった、若者を中心とした文化が集まる都市や少し外れに向かうと住宅街も広がる渋谷区。住宅宿泊事業の事前届出が始まった2018年3月15日に「住宅宿泊事業に関する渋谷区の条例について」を公表しました。
条例の概要
制限する区域 住居専用地域、文教地区
制限する期間
4月5日から7月20日まで
8月29日から10月の第2月曜日の前の週の水曜日まで
10月の第2月曜日の前の週の土曜日から12月25日まで
1月7日から3月25日まで
(注)ただし、届出住宅の周辺地域の住民及び町会からの苦情等に迅速に対応できる体制が確保できると認められるもので、定められた要件にいずれも該当する場合には、制限する区域においても期間の制限にかわらず180日までの実施を認めます。該当する事業者には、住宅宿泊事業法で定める標識のほかに区が交付する標識の掲示を義務づけます。(参考:住宅宿泊事業に関する渋谷区の条例について)
上記のような条例が同ページに記載されており、家主滞在型など一定の条件を満たす場合を除いて住居専用地域と文教地区では春、夏、冬の長期休暇期間以外の営業が規制されます。
品川区
- 一部地域を除いて月曜正午〜土曜正午まで民泊営業を禁止
品川駅があり新幹線が通っていたり成田・羽田の各空港まで一本で向かうことができる品川区。2018年3月30日に「品川区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」を公表しました。条例には以下の記載があります。
第9条 法第18条の規定により住宅宿泊事業の実施を制限する区域(以下「制限区域」という。)は、都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号の近隣商業地域および商業地域(これらの地域が東京都文教地区建築条例(昭和25年東京都条例第88号)第2条の第一種文教地区または第二種文教地区に該当する場合を除く。)を除く区内の全域とする。
2 法第18条の規定により制限区域において住宅宿泊事業の実施を制限する期間は、月曜日の正午から土曜日の正午までとする。
3 届出住宅を構成する建築物の敷地が制限区域の内外にわたる場合において、当該敷地の過半が制限区域に属するときは、当該敷地は制限区域内にあるものとみなして、前項の規定を適用する。
住居専用地域をはじめとした多くの箇所で営業の規制が行われる模様です。規制されるのは月曜の正午から土曜日の正午までと平日が全て規制されます。さらに条例の他に「品川区における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン」も併せて公開されています。
足立区
- 住居専用地域では平日の営業を制限
23区の最北端にある足立区では、2018年2月28日に「足立区における住宅宿泊事業の実施に関する条例」を制定しました。条例によると、
4
住居専用地域では、事業の実施期間について、以下のとおり制限があります。
(1)月曜日の正午から金曜日の正午までは事業を実施できません。住居専用地域営業可能日
(2)祝日の正午から翌日の正午までは実施可能です。
(3)ただし、(1)、(2)の規定にかかわらず12月31日正午から翌年の1月3日正午までは実施できません。
とあり、住居専用地域において平日と正月三ヶ日の期間の営業が規制されます。該当地域は、区内の北側、埼玉よりの地域に多く見られます。また運営の状況に関しても2か月ごと(毎月2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日まで)に報告の義務が起きます。
北区
- ガイドラインの公表のみ、特別な規制はなし
京浜東北線・埼京線が縦に通っており、都心の観光各地にアクセスしやすく土地の価格も安いため1泊の価格を安く抑えることができる北区。北区も「東京都北区住宅宿泊事業法事務取扱及び実施運営要領」としてガイドラインを公表、北区のみの条例はないようです。
豊島区
- 特別な規制はなし、観光客を積極的に迎え入れる方針
ターミナル駅の1つである池袋駅があり、多くの路線が通り各地へのアクセスも優れている豊島区。2018年4月4日に豊島区HP内で住宅宿泊事業を行う方に向けたページが更新されました。ページ内には以下の内容が記されています。
住宅宿泊事業の豊島区ルール
豊島区は、住居専用地域などの区域・期間制限をせず、区内全域に法を適応させることにより、事業者に適切な届出・運用をしてもらうことで、安全・安心・健全で、地域に受け入れられる開かれた住宅宿泊事業を目指します。
区の特徴としては、住宅地と商業地がほぼ半々であり、繁華街のすぐ近くに住宅地があるという、住商混在の街であり、人と人との距離が近く、親しみと賑わいのある住みやすい街です。区民の暮らしを守り、来訪者の安全と豊島区の街を楽しんでいただけるよう、「豊島区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」に基づき下記の要件を厳守した事業運営を行ってください。(参考:住宅宿泊事業法について)
豊島区では、住宅街と商店街が混在した街並みを楽しんでもらえるように住居専用地域など区域による営業日数の規制は行われないようです。豊島区も今後民泊が活発的に行われる地域となりそうです。
葛飾区
- ガイドライン公表も特別な規制はなし
数々の物語の舞台となっている葛飾区。2018年3月27日に「葛飾区における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン」を公開しました。営業日数や営業形態などを規制する条例は特に公表されていません。
ガイドライン内には周辺の地域住民からの声をとりまとめて対策を記録する「事前周知記録書」など、民泊の運用に必要となる書類も併せて添付されています。
江戸川区
- 特別な規制はなくガイドラインの公表のみ
都内のベッドタウンとして多くの住宅が並び、都心へのアクセスもよい江戸川区。2018年3月9日に「江戸川区における住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン」を公表しました。
営業日数などの規制は特に設けていません。ガイドブックも他の区と概要は同じです。江戸川区で民泊を考えている方は一度目を通してみてください。
神奈川県
- 箱根町の別荘地において、別荘の利用者が多い期間は民泊の営業が制限
2018年2月9日に、神奈川県は県全域における民泊新法に関わる条例を公表しました。民泊が規制されるのは、箱根町の約2割にあたる別荘地。住宅宿泊事業法第18条の規定において、生活環境の維持を目的として営業可能な期間が設定されています。詳細は以下の通りです。
区域
都市計画法(昭和 43 年法律第 100 号)第8条第1項第1号に規定する第一種低層住居専用地域のうち、箱根都市計画特別用途地区建築条例(平成8年箱根町条例第6号)第3条に規定する第1種観光地区である区域
住宅宿泊事業を実施してはならない期間
3月1日正午から6月1日正午まで、8月1日正午から9月1日正午まで及び 10月1日正午から 12月1日正午までの間
民泊が営業可能なのは、一般的には閑散期と呼ばれる期間ですが、まだそれが民泊事業へどのような影響があるかは不明な部分も多くあります。
神奈川県管轄の他の地域については、現状規制の予定はありません。また、神奈川県内では横浜市が下記の通り条例を発表していますが、他の政令都市や中核市である、川崎市、相模原市、茅ヶ崎市、横須賀市、藤沢市からどのような条例が公表されるかについても注目する必要があります。
横浜市
- 低層住居専用地域では平日は民泊の運用が不可能、土日祝日のみの営業に
観光地としても多くのスポットがありながら、住みたい街としても取り上げられ強力なブランド力を持つ横浜市。条例骨子案が公開されており、低層住居専用地域では新宿区と同様に金曜正午から月曜日の正午のみ営業可能と規制される予定です。
既存住民に対する配慮が主な理由。今後も規制を行なう自治体が増える傾向
東京都など首都圏を中心に条例を公表している自治体はいずれも「生活環境悪化の防止」を主な理由としています。背景には、違法民泊による騒音・ゴミ問題や、日々の報道の中で問題視されている点への対策が予想されます。そのため、今回記載した営業日数の規制以外にも、地域住民への説明などを求める自治体も多いです。
物件のある地区によっては、アクセス面にくわえ営業の規制も入ることで民泊による収益化が難しい地域もあります。法と条例にもとづき、周辺の住民にも配慮した運用を続けることが民泊の運用では第一です。その上で、自分の所持している物件が民泊で収益を得られることができるのか、民泊代行業者などの専門家と相談しながら、6月の施行に向けて準備をするのが良いでしょう。
地方の民泊に関する条例についても、下記の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。