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第1回 コストを下げつつ顧客満足度を上げる。不動産で培ったITで民泊ビジネスをスマートに(後編)

[記事公開日]2017/11/04
[最終更新日]

ゲスト 株式会社iVacation 大城崇聡(おおぎ・たかとし)代表取締役

Zens代表の町田龍馬が、民泊ビジネスやインバウンド事業にかかわるキーパーソンをゲストに招き、成功のポイントや今後の事業展開について対談形式で伺う新連載「OUR MISSION~インバウンドの未来~」。

記念すべき第1回ゲストは、IT、IoTを活用した民泊の運営や企画開発で急成長する株式会社iVacation代表取締役の大城崇聡さんです。

前半はこちらから

第1回 コストを下げつつ顧客満足度を上げる 不動産で培ったITで民泊ビジネスをスマートに(前編)

町田
ちなみに、いま福岡で作られている新築の投資用民泊アパートはどんなデザインなんですか。二段ベッド2台が入った25㎡のおしゃれな部屋、というのがどうしてもイメージができなくて。「TATERU」の物件というと、基本おしゃれじゃないですか。

大城
プレッシャーかけますね(笑い)。パースですが、こんな感じになります。

大城
いますでに運用している部屋のほうも、25㎡の中に普通に二段ベッド入れてますがすごく評判がいいですよ。

大城
デザインもありますけど、ポイントはロフトだと思っているんですよ。ゲストから部屋の感想を聞くと、「かわいい!」って言ってくださる方が多いんです。

町田
「かわいい!」ですか、「狭っ!」じゃなくて(笑い)。でも、写真を見ると確かに圧迫感はないですね。

大城
ゲストの反応には当社のスタッフもビックリしました。圧迫感がないのは、天井が高いからだと思います。この物件、もともとは築7、8年くらいのごく普通の木造アパートなんです。賃貸で貸し出すと家賃5万円ぐらいなんですが、その一室をお借りして民泊にしています。

町田
そんなに安いんですか!

大城
それで稼働率90%なので、月にすると宿泊料収入が30、40万円にはなります。

町田
このビジネスモデルは素晴らしいですね。Airbnb上のリスティングページで二段ベッドだと内装のよくないイメージだったんですけど、これだと確かにいいですね。

大城
ロフト付きアパートの新しい活用方法ですね。口コミでもよい評価を書いていただいています。

町田
確かに、ゲストが気にするのは木造か鉄筋かどうかよりも、見た目の清潔さとかですよね。

大城
そうですね。それとこの口コミの高さのポイントはもう一つ、「TRIP PHONE」があるからだと思います。

町田
これがチェックインカウンターでゲストに渡されて、滞在中にチャットでいろいろ聞けるわけですね。

大城
日英中韓、繁体漢体に対応していますね。

町田
このコンシェルジュ機能に対応されているスタッフというのは、どこかにアウトソーシングされているんですか。

大城
クラウドソーシングで用意してますね。

町田
世界中にいる個人に業務委託している形ですか。

大城
ええ。その方たちにアプリをダウンロードいただいて、その中の専用のチャット機能を使ってもらってます。だからゲストから問い合わせきたら、「あ、LINE来た!」みたいな感じだと思います。

町田
その方たちは福岡のことも答えられるんですか。

大城
特殊な質問はあまり来ないです。仮に来ても「お調べしますので少々お待ちください」と返して調べます。

町田
「おすすめのお店を教えてください」なんて質問は。

大城
海外ゲストの場合だと、たとえば福岡で「もつ鍋食べたい」とか、韓国語が通じるお店、英語が通じるお店を教えて、といった相談であればそれに対応しますし、予約できる店であれば予約をします。食事予約のリクエストは一番多いですね。

町田
それって無料ですか。

大城
無料です。

町田
素晴らしいですね。ゲストのリクエストがあればどこでも予約するんですか。

大城
そうですね、予約します。

町田
韓国語が通じる、というような情報はどうやって得ているんですか。

大城
継続してサービスを続けていくことでデータベース化し、コンシェルジュがアプリ内で共有しています。

町田
焼肉ならこのお店、寿司ならこのお店、という感じですか。

大城
そうですね。

町田
コンシェルジュがどこの国にいても、そのリストがあれば案内できるわけですね。

大城
そういう風に作ってます。それを随時ブラッシュアップしています。

町田
世界中にコンシェルジュの方は何人くらいいらっしゃるんですか。

大城
国内外合わせて数十人ですね。毎日各言語担当者がいます。

町田
質問には平均どのくらいのスピードで返されているんですか。

大城
1分前後ですね。データベース化されている情報は即レスできます。タクシーの場合は、予約して手配します。

町田
レスポンスが早いというのはレビューのよくなる大きなポイントですね。当社もそこはすごく意識しています。

大城
ゲストとどう対話するかというと、いろんな方法があると思うんですよね。その中でも自分たちでちゃんと民泊に合った、お客様に沿ったオペレーションを行いつつ、コストをかけずにお互い楽しんでやりとりしたいな、ということで「TRIP PHONE」を開発しました。

町田
「TRIP PHONE」は、当社のように民泊の運営代行をしている他社が利用したいといえば、使えるんですか。

大城
もちろん提供します。

町田
お値段はどのくらいですか。

大城
7GBだったら月額6000円、無制限だったら9000円。一日あたり200円、300円です。コンシェルジュ機能とWi-Fiルーターがセットでこの価格ですから安いと思いますよ。

町田
滞在中のゲストへの細かい対応というのがネックというホストの方は多いので、それはありがたいサービスでしょうね。

大城
日本で楽しく旅行するための質問だけがここに来て、それを解決していくというのが一番いいのかな、と。

町田
「TRIP PHONE」はいま何台くらい導入されているんですか。

大城
ホテル含め全体で200台くらいですね。

町田
どういうホテルが採用するんですか。

大城
やはり宿泊に特化したバジェット型のホテルですね。あと、大手のホテルのコンシェルジュデスクで導入されているケースもあります。

町田
端末を開発してゲストに使ってもらおう、というのはどこから出てきたアイデアなんですか。

大城
民泊をできるだけ無人でどうオペレーションしていくか、という発想がスタートですね。民泊だから全くサービスがなくていい、というのはよくないと思うんです。稼働率を上げたい。レビューも上げたい。これはどんなオーナーにも共通する思いですから。「安かった」だけでは次につながらない。民泊だけどサービスもある、という状態にしようと思ったら、こういったコンシェルジュサービスかな、と。対応も「室内」だけに限定すると意味がなくて、当然宿泊したら街に出て食事をしたり遊んだりしますから、そんなときに持ち歩けるものがいいな、と思ったんですよね。

町田
民泊というと内装や清掃など部屋でいかに快適に過ごしてもらうかをまず考えますけど、部屋の外でのゲストの活動をサポートするというのは新しい視点ですね。

大城
外国人が日本に来て困るポイントって、コミュニケーションが取れなかったり通信環境が悪いとかじゃないですか。それを全部これ一台で解消できるんです。いまNTTドコモさんにもご協力いただいて、「TRIP PHONE」の中に手書き翻訳機能を入れて実証実験しています。たとえば、ネイティブの人が飲食店でウォーターくださいと言っても通じない。でもここに「Water」と書き込めば、自動的に「水」に変換されて出てくるんです。

町田
他にも他社と共同の実証実験などはされているんですか。

大城
翻訳以外にも、アクティビティ予約やチケット予約などを複数の企業と提携し、サービスを提供しています。

町田
御社の強みは、いろいろなIT、IoTのシステムを一から作れるところだと思うんですが、エンジニアはどのくらいおられるんですか。

大城
インベスターズクラウド社としてになりますけど、70人くらいいます。全社員の2
割以上ですね。

町田
2割って本当に多いですね。不動産会社というよりテック企業……。

大城
ええ、テック企業です。全グループのシステムを内製で開発していて、各サービスのプラットフォーム、ハード、IT機器も全部自社でやってます。いま民泊の部門だと、自動チェックインできる機器を作っています。

町田
それはいつ頃導入されますか。

大城
2017年の10月に、お菓子が食べ放題のコンセプト型ホステル「TRIP POD~snack&bed~」が福岡にできるので、そこに導入します。

町田
どういう機能になるんですか。

大城
ゲストは画面上でパスポートのスキャンやサインを行い、運営側は管理画面で確認するだけの簡潔な運用ですね。もちろん保健所からも許諾を得ています。QRコードが鍵になっていて、発行してゲストのスマホに飛ばすこともできるので、鍵をなくすというリスクもなくなります。

町田
そのホステルでも「TRIP PHONE」は使うんですか。

大城
はい、フロントで渡します。

町田
先日、京都にあるホステル型の共用部充実がコンセプトのホテルに泊まったんです。ここも専用のタブレットが宿泊者に渡されるんですが、タブレットのケースにカードキーが入っている仕様でした。ただ面白いと思ったのが、ベッドがアプリで調整できて、目覚ましアラームとかもそれで設定できる。御社の場合は、よりスマートロックに近い感じですね。

大城
そうです。当社のIoTは基本的にホテルの業務のチェックインからチェックアウトまでの一連の流れがいかにスマートに終わるか、ストレスなくできるか、という機能を重視しています。ランニングコストをどれだけ抑えられるかという発想です。

町田
こういったホステル事業も今後、増やしていこうという考えですか。

大城
そうですね。福岡の次は京都でのオープンを予定しています。

町田
これもホステルのプランを御社が作って、土地情報と一緒にオーナーさんに販売するという形ですか。

大城
個人のオーナーはもちろん、法人や企業など幅広い層に販売します。テナントを賃貸で借りて、リノベーションし、コンセプトをのせてホステルの運用をします。

町田
すでにある建物の中身をリノベーションしていくということですね。

大城
ええ、その方がいいと思います。中心部でホステルを運用しようと思ったら、テナントが一番効率が良いです。

町田
そのビジネスモデルの第一号がいま話された福岡のホステルなんですね。

大城
そうです。10月のオープンに向け、プロモーションチームが中心になっていろいろな企画を考えています。

町田
このぐらいのサイズで60ベッドというと、寝るところはカプセルというイメージです。

大城
完全にカプセルです。でも、ホステルに大事なのって、サービスとかよりもコンテンツ性だと思うんです。「お菓子を食べながらくつろぐホステル」もそうですが、もっと個性的なものが増えるといいですね。

町田
ホステルは何らかの差別化が必要だということですね。

大城
ええ、ホステルの場合、そもそも利用する層は比較的若い人が多いと思うんですよ。あとは日本に興味がある外国人、ビジネスとかじゃなく、日本の文化を見たい外国人だと思います。日本人のゲスト、たとえば20歳前後の若い女の子たちも、いろんなお菓子食べ放題なら泊まる理由になるんじゃないか、女子会プランとか面白そうだな、という発想ですね。他にはこのホステルに来ないと食べられないお菓子があるとか、市場に出回る前の特別な商品をいち早く試食できるとか。今回のホステルでも、福岡の老舗のお菓子屋さんとタイアップして、限定のお菓子を準備する予定です。

町田
それは投資用民泊アパートなどには置かない。

大城
置きません。投資用民泊アパートはグループ宿泊が多いので、お菓子があるから泊まりに来るっていうのはないと思います。

町田
それよりは値段やチャットなどのサービスを提供することで満足度を上げていくことが大事ということですね。

大城
いまのところはそれが正しいのかなと思ってます。結局、4人で一緒に泊まれる部屋ってホテルだとなかなかないじゃないですか。4人で泊まれて、キッチンがあって、お風呂とトイレがそのグループで占有できる施設は貴重な存在であることは間違いないと思います。コンセプト型ホステルと投資用民泊アパートは需要が全く違うし、住み分けられると思ってますね。

町田
最後に、いま民泊業界に興味を持たれている、参入を考えておられる不動産オーナーや関連企業に御社として何かアピールしたいことはありますか。

大城
いろいろなやり方はあると思うんですが、我々が参入したホステルや民泊事業というのは、究極のところ、コストとサービスのバランスだと思います。だからこそ、IT、IoTの導入は必要でしょうね。何をどう使いこなすかは、おそらく事業者というより運営管理をする側が選ぶというのが正しい形だと思います。これから民泊事業に参入される事業者さんは、そういう知見のあるパートナーをしっかりと見つけていくことが大事ではないでしょうか。

町田
現場を知っているオペレーターのほうが何が必要かわかっているということですね。

大城
はい。また、民泊事業は全国画一ではできないので、マーケットの流れを見つつ、その自治体の条例をいかにうまく読み解いて施設の運営形態を考えていくことですね。合法的に365日民泊を実現する方法もありますし。

町田
まさにそれは御社における福岡でのビジネスモデルですね。地域展開で先行し、自社のITでコストも下げていくという。

大城
しかもコストは下がるのにサティスファクション(顧客満足度)は上がっていくんです。これが、民泊ビジネスだと思うんです。

【キーパーソン】
大城崇聡(おおぎ・たかとし)
1980年、福岡県生まれ。株式会社インベスターズクラウド専務取締役、株式会社iVacation 代表取締役。IT×不動産の経験をもとに、民泊(宿泊)事業とITの融合を推進する。

【会社紹介】
株式会社iVacationは、民泊及び民泊投資用物件の企画や民泊運用のためのシステム開発・提供を行っております。安全かつ効率的に民泊を運営するための、IoT民泊システム「TATERU bnb」の構築を推進。旅行者向けのIoTデバイス「TRIP PHONE」や自動チェックインシステムの開発、また民泊業界のデータエクスチェンジサービスの提供を行い、国内外のゲスト、運営、ホストの目線に立ったIoT民泊システムの提供をいたします。

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