第1回 コストを下げつつ顧客満足度を上げる 不動産で培ったITで民泊ビジネスをスマートに(前編)

ゲスト 株式会社 iVacation 大城崇聡(おおぎ・たかとし)代表取締役

Zens代表の町田龍馬が、民泊ビジネスやインバウンド事業にかかわるキーパーソンをゲストに招き、成功のポイントや今後の事業展開について対談形式で伺う新連載「OUR MISSION~インバウンドの未来~」。記念すべき第1回ゲストは、IT、IoTを活用した民泊の運営や企画開発で急成長する株式会社iVacation代表取締役の大城崇聡さんです。

町田
お忙しいなか、インタビューにご登場いただきありがとうございます。このメディアは民泊ビジネスに関心をもたれている不動産オーナーや関連企業に向けて発信していく予定です。できるだけ突っ込んだお話もお伺いしたいと思っています。今回が第1回なので、不慣れなところもあるかと思いますが、よろしくお願いします。

大城
エーッ!当社が1回目なんですか。それは光栄です。

町田
まず、御社がなぜ民泊事業に参入されたのか、どんなところに魅力を感じられたのか、お聞かせいただけますか。

大城
もともと親会社、インベスターズクラウド社では、IT×不動産のRe Tech(Realestate Tech=情報通信技術を駆使した不動産ビジネス)の領域の事業を展開していて、アプリで始めるアパート経営『TATERU』というサービスを提供しています。

さて、民泊はホテル領域なのか、不動産領域なのかと考えた時に、断然不動産だと僕は思ったんですね。そこで、アパート投資をしたい人と土地をマッチングする「TATERU」のノウハウと、これまで培ってきたPM(プロパティマネジメント=オーナーに代わって専門スタッフが不動産を運用すること)のノウハウを民泊に転用できるんじゃないか、という発想がスタートですね。

それと、不動産業界と同じように宿泊業界もアナログだな、ということにも気づきました。不動産業界でテクノロジーを駆使してイノベーションを起こしたように、宿泊事業でも同じようなことができるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

町田
インベスターズクラウド社はITによって不動産ビジネスを大きく変えたと言われていますが、これまでの不動産会社や同業他社とどこが違うのか、一番差別化が図れた部分はどんなところですか。

大城
たとえば、よくあるケースとして「投資用のマンション買いませんか」という電話がかかってきたりしますよね。

町田
そういう話、よく聞きますね。

大城
インベスターズクラウド社の場合、もともと興味のない方に対するプッシュ営業は一切しません。我々がターゲットにしているのは、いろいろな理由で不動産投資に漠然と興味をもっている人たちなんです。そういう人たちに適切にデジタルマーケティングでネット集客をする。その方たちが会員登録しているのがこの「TATERU」というマッチングアプリなんです。

町田
いま、どの程度の利用者がいるんですか。

大城
月間、ざっと1300人が新規で会員登録されて累計で11万人くらいです。投資を考えている人とアパート情報をマッチングするというのがアプリの主な機能です。とはいえ、みなさんアパート経営ってよくわからないから、だれかに話を聞きたいじゃないですか。そのため24時間いつでも対応できるBOTと直接コンシェルジュと繋がれるチャット機能もつけています。

町田
確かに気軽に相談できるのはいいですね。

大城
他の会員のレビューを見ながら、相談するコンシェルジュや地域を選ぶこともできます。基本的にはみなさん、チャットでコミュニケーションされてますね。質問も「福岡出身だから福岡にアパート買いたいんだけど」といった具体的なものから、「自己資金って最初にどのくらい必要なのかな」と抽象的なものまで、どんな質問でも気軽に聞くことができます。

町田
すごく自然な流れで集客できるわけですね。

大城
そうですね。当社では資料のお渡しや契約に至るまでのやりとりもチャットでおこなっています。でも不動産業界では、そもそも不動産のような高額なものがアプリで売れるはずない、電話でしか売れない、会わなきゃ売れないというのが常識でした。実際にアプリでやりとりを完結できるようにしてみたらそうでもなかったですけどね。

町田
毎月どのくらい売れるんですか。

大城
そうですね、今期は700棟くらいですかね。インベスターズクラウド社は主要都市14都市で展開していて、その土地情報と日本全国にいるその土地を欲しい人たちをこのアプリでマッチングしています。

通常のデベロッパーというのは、まず土地を買ってその上に物を建てて、その情報を不動産投資情報サイトに載せてから売り先を探すんですね。そうすると、そのタイムラグの分、どうしても在庫が必要になってきます。

でも、インベスターズクラウド社の場合は土地情報と会員を直接マッチングするので、建ててから売るのではなく、土地情報に、建築プランや収支シミュレーションなどの計画を乗せて、会員に対して一気に情報発信します。

ですので、朝、土地情報を取得して、昼間のうちにプランを作って、夕方それを配信、夜にはもう買いたい人からの問い合わせが来る、みたいな感じですね。

町田
すごいスピード感ですね。

大城
そうすると在庫は持たなくていいんですね。今期500億円くらいの売上を見込んでいますが、普通500億売り上げようと思ったら、400億ぐらいの在庫はいるはずなんですよ。

でも、インベスターズクラウド社はその在庫が38億しかなくても500億売り上げることができる。X-Tech(ITによるイノベーション)やRe Techって、なんだかすごく難しそうに思われがちなんですけど、要はややアナログな業界の業務フローをITを活用して簡便にした、それだけのことなんですよ。

町田
民泊事業もその発想で、ITでシンプルにしていけばいいと。

大城
そうですね。民泊の場合も流通経路をきれいに整理して、コミュニケーションツールも整理して、その後の管理ツールやプロパティマネジメント、送金の状況、今月の収支、そういうのを紙ではなくて、全部アプリ上で送って終わりにできるんです。清掃が終わったらオンタイムで報告が入りますし、アプリ上で確定申告までできます。

町田
Zensが行なっている民泊の管理とよく似てますね。

大城
ですね。民泊ビジネスって要するに、不動産管理のいろいろなタームがそれぞれ短くなるだけなんですよ。宿泊の予約を募るのも、AirbnbやOTA(インターネットトラベル)に変わっただけで不動産情報をスーモやホームズに載せるのとほぼ同じことだと思うんです。

チェックインの処理は入居の処理と似たようなものですし、退去の処理がアプリできるならチェックアウトや清掃の処理もアプリでできますよね。アパートだったら2年ぐらいのタームだったのが、民泊だと1日とか2日に変わるだけなんです。

町田
確かにそうですね。よくわかります。

大城
説明が長くなっちゃいましたけど、そんなに難しい話じゃないな、というのが民泊参入のきっかけですね。

町田
御社はいま、民泊関連の事業でいうとIoT民泊マッチングプラットフォームの「TATERU bnb」、宿泊者が滞在中に利用するIoTデバイス「TRIP PHONE」、コンセプト型宿泊施設や投資用民泊アパートのの企画開発をされていますよね。事業として、特に将来性を感じるものはどれですか。

大城
特に力を入れているのが、投資用民泊アパートの企画開発ですね。福岡で展開を始めていて、福岡市の中心部にチェックインセンターを設け、その周りに物件をつくっています。なぜ福岡市で展開をスタートしたかというと、福岡市では簡易宿所の条件緩和が進んでいるからなんです。

たとえば、従来だと帳場(フロント)が必要だったりトイレの数が複数必要だとか、いろいろ高いハードルがあります。ですが福岡市の場合、昨年12月に旅館業法施行条例を改正していて、帳場についても代替できる設備があればいいことになっています。当社の場合は帳場を代替する設備としてチェックインセンターを設けているため、簡易宿所の認可がおりています。

町田
なるほど。簡易宿所の認可がおりれば、民泊新法の180日の上限も関係ないですもんね。

大城
そうですね。この仕組みを使えば、1年を通して運用できるはずなんです。トライアルで昨年末から、福岡市内の木造アパートの3部屋を当社が借りて簡易宿所の許認可をとって運用してみたんです。すると需要がすごくあったんですね。

直近だと、稼働率90%をずっと超えています。福岡市の条例の整理をしていくなかで、この仕組みを使えば大丈夫だと確信できたので投資用民泊アパートを企画して簡易宿所の許認可を取り、さらに我々が得意としているIT、IoTを活用した運用システムを構築するという仕組みを作ったんです。

町田
利回りはどうですか。

大城
フルエクィティ(全額自己資金)の場合、稼働率70%でNET利回り5~7%とれますね。

町田
その仕組みを使って、現時点で新築から簡易宿所の許認可をとって運用がスタートした物件ってあるんですか。

大城
運用はまだですが、販売を開始しすでに受注をいただいています。年内、12月に一棟目が完成します。4部屋ともロフト付きで面積上では25㎡前後です。

町田
御社としては、1Kロフト付きが4部屋というアパートをパッケージとして福岡で売っていく、ということになるわけですね。

大城
そうですね。また検討段階ですが大阪と大田区はやりたいです。

町田
大阪は特区民泊がありますから各社さんけっこう動いてきていますよね。

大城
大田区の特区民泊も6泊7日から2泊3日に短縮されますしね。

町田
福岡ではいま何棟くらい販売受注があるんですか。

大城
1棟は受注済みで、その他にも複数棟話が進んでいます。買いたいという方は非常に多いですね。

町田
具体的にどういう人が買われるんですか。

大城
主に「TATERU」でつながりのできたお客様ですね。アパート経営や不動産投資の経験のある方が、新しい投資をやってみたいとおっしゃられることが多いです。

町田
あとは土地情報さえあれば、いくらでもやれるって感じですか。

大城
土地情報もたくさんありますね。福岡市の場合、中心地に限らず比較的広範囲に民泊の需要があるようです。コンパクトシティと言われている福岡市ですが、その分中心地以外でも需要があるという特殊なエリアだと思います。

町田
なるほど。

大城
福岡市はMICE(国際会議、学会、展示会)も日本の地方都市の中で積極的に誘致していますし、まだ増えるようです。MICEを1回やると2週間くらい、多くの参加者がホテルに泊まりますし、そこに人気アーティストのコンサートが重なったら、もうホテルなんて全然取れなくなってしまう。そこで民泊の出番があるんです。

町田
福岡ではしばらくこの仕組みでいける、というのはわかるんですが、この先10年、20年経ったときに供給過剰になるという心配はないんでしょうか。

大城
その質問、本当によく聞かれます。まず、ホテルと当社が企画する民泊アパートのADRを比較してもご利用いただくゲストの層は違うと考えています。また、外国人観光客の数は増えていますしFITの増加でグループでの宿泊需要も高まっているので、この価格帯の施設はまだまだ足りていないと思ってます。

町田
ワンルームで何人くらい泊める想定ですか。

大城
25㎡くらいで4人ですね。二段ベッド2台。それが基本形ですね。なおさらグループ旅行には最適だと思うんですよね。だから、ホテルと競合するかと言われたらたぶんしないと思うんですよ。

町田
マーケットがそもそも違うということですね。

大城
そうです。仮に当社の物件だと4人で泊まっても1日12000円、2人で泊まったら6000円。それで自由に出入りできてだれからも干渉されなくて、と考えたらゲストもきっと楽だと思うんですよ。

町田
10年先も、3人から4人で泊まるマーケットが続くだろうということですね。

大城
あとは民泊のブランディングですね。テクノロジーを活用して効率的にサービスが提供される民泊を目指しています。

町田
コストパフォーマンスの良い宿泊場所だと思われたいと。

大城
そうですね。本来サービスのない民泊にITを活用してサービスを付加することができる、コストパフォーマンスのよい民泊ですね。

町田
民泊だからゲストに何か特別な体験を提供しなきゃいけない、というのはオーナーさんにとっては確かに大変ですよね。要は利回りを上げていきたいんだ、という人も多いでしょうし。

大城
もともと文化的にバケーションレンタルというものが日本にはほぼ存在しないじゃないですか。それが「民泊」という言葉に変換されて、最初は自分の空いている部屋を貸そうというニュアンスだったものが投資商品になったわけです。となるとオーナーは投資効率が良いものを好みますよね。

町田
当社に運営代行を依頼されるホストの方も、丸投げできるからいいとおっしゃいますね。

大城

僕は住宅宿泊事業法(民泊新法)ができたことはすごくいいことだと思っているんです。上限180日になって通年営業できないから困る、というのではなくて、旅館業法を使って堂々と民泊がやれるところに照準を合わせて展開したらいい。おそらく旅館業法も緩和されていくと思うので、展開できる場所もおのずと増えていくでしょうね。

 

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第1回 コストを下げつつ顧客満足度を上げる。不動産で培ったITで民泊ビジネスをスマートに(後編)