住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)は、2017年6月9日に国会を通過して成立しました。どうして、いま民泊の規制が必要という議論が生まれたのか? 民泊の需要は減るわけでもなく、2020年の東京オリンピックに向けて大きな期待を寄せられていることはとても重要なポイントでしょう。

新法の内容に対しては、好意的な意見だけではなく、民泊ホスト、関連事業者、仲介事業者、自治体など、立場によってこの法律の捉え方・受け止め方が異なることからも、複雑な背景が伺えます。

民泊新法(住宅宿泊事業法)は、いつ成立して、いつ施行されるのでしょうか

民泊新法(住宅宿泊事業法)は、ホテルや旅館など、これまでも存在した旅館業法に基づく宿泊施設ではなく、住宅での宿泊事業を規定するための新しい法律です。

2014年ごろから急激に日本への外国人観光客が増えたことをきっかけに、広島・大阪・京都など人気の観光地や首都圏で宿泊施設の不足が問題視されるようになりました。

ホテルや旅館など国内の既存宿泊施設だけでは、訪日外国人観光客のニーズに対応しきれない、ということが本質的な課題でした。したがって、訪日外国人に宿泊施設を提供するのは国家戦略的な課題でもあります。

現に、2020年には4000万人、2030年にはなんと6000万人という明確な目標も定められています。現在の観光立国フランスは、年間来訪外国人が8000万人だそうです。この水準で比較をすると、6000万人という数字は世界第5位になります。

一方、日本ではリピートして寝具を提供し金銭を受け取る場合、「旅館業法」が定める許可を取得しなければならないというルールがありました。しかし、個人のマンションや一般の住宅で宿泊事業を行ないたい民泊ホストにとって、旅館業法の基準を満たすことはかなりハードルが高かったのです。

2013年12月に法律が制定され、東京都大田区や大阪市などで条例が制定された「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設)」制度を活用するという方法が可能になりました。が、これも最低宿泊日数の制限などが障害となって広がっていませんでした。

(最低宿泊日数の制限とは、最低日数は6泊7日と定められていて、旅行者のニーズにまったく合わないため特区民泊の宿泊施設はほとんど利用されてきませんでした。その実態を受け、昨年10月の閣議決定で最低宿泊日数が2泊3日に緩和されることが決定していました。今年1月には、大阪市と北九州市で最低日数2泊3日に緩和された特区民泊が誕生しています)

したがって、結果的に日本国内の約8割の民泊施設は無許可(特区民泊の認定を得ないものを含む)で運営しているという実情のまま、宿泊者による騒音、ゴミの不法投棄など、生活環境や衛生環境にかかわる周辺住民とのトラブルが増加してしまう、という「良くないサイクル」ができあがっていました。

しかし、それを規制する法律もないので、民泊という新たな宿泊形態に対応するための現実的な法規制が求められていたということです。

法案自体は2015年から議論が重ねられ、2017年3月10日に閣議決定、6月1日に衆院で可決、6月9日には参院でも可決され、成立となりました。法案成立の段階では、2018年1月開始を目指していましたが、各自治体の準備期間などを考慮して同年6月施行に変更となっています。この10月には国交省・厚労省が政省令案を公表し、当月内に公布されます。

なぜ民泊新法が作られたのか

民泊新法(住宅宿泊事業法)第1条

「この法律は、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係わる届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係わる登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に適格に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。」

ようするに、民泊新法は増え続ける訪日外国人の需要や国内旅行者の需要に対応して宿泊・滞在先を確保・拡大しつつ、業務の適正化を図ることが目的、ということです。

民泊によって外国人観光客増えることが期待される~きっかけは東京オリンピック

訪日外国人対策に加えて、大きな背景として挙げられるのが東京オリンピックです。2020年東京オリンピックを真近に控え、訪日観光客の宿泊収容数の確保は、国家戦略的にも優先順位の高い課題とされてきました。

そこで、民家を宿泊施設として利用する民泊が、大きくクローズアップされました。日本の成長戦略の一つとして、日本を観光立国として、訪日観光客を現在の10倍もの数に増やし、お金を落としてもらい、経済を活性化させるいわゆるインバウンド戦略が提唱されました。

当時の情勢を振り返ると、中国人による爆買いを見越しての立案でもありましたが、国内にはそれに見合うホテルや旅館の絶対数が足りないと指摘され、その課題解決策として民泊が注目され始めたのです。

不透明な民泊から、安心・安全・清潔な民泊へ

無許可で民泊営業をする施設が続出しトラブルも増加していたことで、ホスト(貸主)、ゲスト(借り手)どちらにとっても不透明な印象が強かった民泊業界。既存住宅やマンションでのトラブルは社会問題化しました。マンションの管理組合などでは、民泊を始めた居住者を追い出すなども騒動も少なからず生まれました。

しかし、民泊新法が施行されれば、民泊ホストの義務としてホスト自身の届出(各都道府県知事)や、民泊ホストに変わって物件管理をする住宅宿泊管理業者にも国土交通省への登録が義務付けられ、民泊サイトを運営する住宅宿泊仲介業者も環境庁への登録が義務付けられます。


(環境庁「住宅宿泊事業法案の概要」より)
したがって、これまで無許可での民泊を行なっていた多くのホストは届出を義務付けられることになり、民泊ゲストからの信頼・安全性が生まれ日本の民泊事業も大きく活性化すると見込まれます。

民泊新法が適用される条件

住宅宿泊事業法案要綱によると、「新法で定められる民泊」とは、「旅館業以外の人が住宅に人を宿泊させる行為」で、「行為が年間180日を越えないもの」が民泊新法の適応条件とされています。

ここでの住宅とは、「家屋の中に台所、浴室、便所、洗面設備等の設備」があり、「実際に人の生活拠点として使われているところ」または「民泊利用の前後に人に貸し出ししている家屋」と定義されます。

旅館業法 住宅宿泊事業法(民泊新法) 民泊条例
簡易宿所営業 家主居住型 家主不在型 大阪市
行政への手続者 事業者 事業者 事業者 事業者
行政への申告 許可 届出 届出 認定
営業日数上限 なし 180日 180日 なし
宿泊日数制限 なし なし なし 2泊3日以上 ※1
建物用途 ホテル・旅館 住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎 住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎 住宅、長屋、共同住宅
苦情受付者 事業者 家主(事業者) 住宅宿泊管理業者 事業者
フロント設置 原則なし ※2 なし なし なし
居室の床面積 3.3㎡以上 ※3 なし なし 25㎡以上
行政の立入検査 あり あり あり 条例で制定
住居専用地域
での営業
NG NG ※4
自動火災報知機 必要 未定 未定 必要
契約形態 宿泊契約 宿泊契約 宿泊契約 賃貸借契約
宿泊者名簿 必要 必要 必要 必要
標識の掲示 必要 必要 必要 必要
目的 投資収益 文化交流 休眠地活用 投資収益
収益性

※1 2016年9月9日の国家戦略特別区域諮問会議で決定。
※2 条例でフロント設置を義務付けている自治体もあります。
※3 宿泊者の数が10人未満と申請された簡易宿所。
※4 条例で特区民泊の用途地域制限をなくしている自治体もあります。

「民泊新法の成立その背景」についてのまとめ

近年急速に普及した日本での民泊利用。法整備を求める声多かった中、ついに民泊新法が成立しました。民泊自体には変わらず賛否両論ありますが、法律が設けられたことによって制度として明確になった部分が多く、新法施行に向けた準備など、各方面での動きは今後ますます活発化していくことが予想されます。

下記の記事では、民泊新法の概要についても触れています。

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各自治体が条例を公表したり、民泊新法について改正や見直しを求める声もあり、民泊新法施行まで国や自治体の動向に注目する必要がありそうです。

 

 

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