旅館業法が改正されても民泊は営業できない?上乗せ規制を行う自治体の条例とは

住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行に向け、厚生労働省は平成30年1月31日に「旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」を発表しました。

これにより、民泊を始める方、民泊事業を拡大する方が増え、業界全体が盛り上がることが見込まれています。

今回の改正では、フロントの設置義務や最低客室数が撤廃され、また部屋面積やトイレについての規定なども変わり、これまで難しかったワンルームマンションでの民泊も合法に行えるようになりました。

これにより、簡易宿所営業の許可を得て、一つの物件を民泊と賃貸という二つの形態で利用しやすくなります。このような変化は、不動産投資に携わる方にとっても喜ばしい変化です。

しかしこうした民泊業界への追い風に、立ちはばかる壁があります。それが、上乗せ条例です。今回は、この上乗せ条例の内容や、今後の規制についてご紹介します。

国が規制緩和をしても……民泊の営業を制限し続ける上乗せ条例とは?


2017年12月、民泊業界にある一つのニュースが舞い込みました。

一般住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」を全国で解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行を前に、住居専用地域などでの民泊営業を全面禁止する東京都大田区の条例が8日、区議会定例会の本会議で可決、成立した。民泊による騒音やごみ出しなどの近隣トラブルを防止し、平穏な住環境を確保するのが狙い。新法と同じ来年6月15日に施行される。

観光庁によると、国の法律に上乗せして民泊を規制する条例の成立は全国初とみられる。

(引用:産経ニュース

この記事に出てくる「国の法律に上乗せして民泊を規制する条例」は、上乗せ条例と呼ばれています。これこそが、民泊新法や旅館業法の改定で巻き起こる追い風の動きに立ちはだかる存在です。

上乗せ条例とは、国会で制定された法律に上乗せする形で、各都道府県や市町村が定める条例を指します。日本では憲法において「法律の範囲内で条例を制定することができる」(94条)とされており、実際にさまざまな法律で上乗せ条例が制定されています。

では、実際にどんな条例が制定されているのか、実例をもとに確認してみましょう。

大田区・新宿区での上乗せ条例

まずは、先に引用した東京都大田区を例にとります。大田区は羽田空港から近いことに加え、特区民泊に指定されていることから民泊激戦区の一つです。

特区民泊もこの影響をうけて、6泊7日以上からと定められていた利用日数制限を、2泊3日に短縮すると発表。これは2017年10月のことであり、この地区での民泊がさらに加速すると予想されました。

しかしその一方で、2017年12月には住居専用地域を含む一部地域において民泊を禁止する条例が可決されています。これは日本初の民泊実施地区の制限であり、旅館業法改定で盛り上がる民泊業界の流れを止めるような動きだと見られています。

さらに、地域の制限だけでなく事前準備においても周囲へ周知を義務づけました。

第4条
法第13条第1項に規定する特定認定(以下、特定認定という。)を受けようとする者は、規則で定めるところにより、あらかじめ当該特定認定に係る事業計画の内容について近隣住民に周知しなければならない。

このような義務は、本来は民泊利用ができない集合住宅での営業を行う、闇民泊に対する対応策の一つであるともいえるでしょう。

大田区だけでなく、民泊が盛んな新宿区でも上乗せ条例が可決されています。

2017年12月11日、新宿区では月曜日正午から金曜日正午まで、住居専用地域での民泊営業を禁止するという条例が可決されました。民泊利用者がゴミ出しや騒音などにおいて、近隣住民に迷惑をかけていたことに対する策を講じた形となっています。

これは日本で2番目の規制条例となり、曜日で制限を加えたのは日本初の試みです。また大田区同様、民泊を始める際は近隣への周知をしなければならないと定めました。

都内ではこうした規制の動きが盛んになっており、23区内ではほとんどの地域で民泊を制限する条例が検討、公表されています。

【東京・首都圏版】各自治体が発表した民泊の条例・上乗せ規制は?(2018年4月27日更新)

東京以外でもこうした動きが広がっており、静岡県と兵庫県が2018年2月に、堺市、群馬県、奈良県などの各都市で、民泊営業に対する日数や地区の制限を盛り込んだ条例が提出されます。

政府から自治体へ規制緩和の依頼


民泊に関する上乗せ条例を制定する地区が続出するなか、政府は各自治体へこうした条例の緩和を依頼しました。

厚生労働省は、民泊を一部解禁する今月1日施行の政令改正に沿って、自治体でも関係条例を改正するよう、都道府県や特別区に通知した。12日の専門家検討会で明らかにした。地域住民とのトラブルを防ぐため、民泊を認めない条例を3月末に作った東京都台東区など、民泊に消極的な自治体もあり、あつれきも予想される。厚労省は民泊を旅館業法に基づく「簡易宿所」として許可し、フロント設置を要件から外す規制緩和を決めた。マンションの空き部屋での民泊も一部で可能になる。ただ、条例でフロント設置を義務づけている自治体もあり、通知で改正を求めた。

(引用:毎日新聞

これはインバウンド事業の発展と、2020年に控えたオリンピック・パラリンピックに伴い、宿泊施設の需要が増加することを見込んでの通知だとみられています。実際にこれまで、民泊を規制するような上乗せ条例だけでなく、促進するような内容のものも制定されました。

その一例が、福岡県福岡市です。Airbnbに掲載されている物件数が多い福岡市では2016年の段階で民泊のハードルを下げる条例が制定されています。旅館業法改定によりフロント設置の義務は今後廃止されますが、福岡市ではいち早くこの規制緩和を行っていました。東京23区と異なり、今回の旅館業法改定による上乗せ条例での規制強化といった動きも見られません。

上乗せ条例は民泊業界の失速させるか

旅館業法改定により、民泊を始めたり事業を拡大させたりといったハードルは下がりました。しかし、近隣住民からの苦情やごみ問題など、まだまだ多くの問題が横たわっています。こうした問題を解決するため、各地方自治体では上乗せ条例で民泊を規制しました。

一方で、宿泊施設の需要が伸びていることを受けて、こうした規制を上乗せしない自治体があるのも事実です。今後、どの地域でどういった条例が上乗せされるのか。注目が集まります。