旅館業法改正による規制緩和で民泊は変わるのか?おさえたい3つの改正と注意点とは

厚生労働省は平成30年1月31日に「旅館業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」を発表しました。この発表によると、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される平成30年6月15日に、旅館業法の一部が改正される予定です。この改正は民泊業界にとっても変化をもたらすといわれていますが、それはなぜでしょうか。実際に改正案を確認しながら、解説していきます。

旅館業法改正の背景

旅館業法は、戦後間もない1948年に制定されました。それから半世紀が経っていますが、時代のニーズに合わせた変化を遂げられていないのが実情です。そのため違法民泊も増え、さまざまなトラブルの原因となっています。

そうした背景のなか、政府はこの法律の改正を検討し始めました。2017年12月には規制改革推進会議が、「旅館業規制の見直しに関する意見」を発表し、下記の項目について撤廃(A)、もしくは必要最小限に変更(B)すべきだと提言しています。

A.① 客室の最低数
② 寝具の種類
③ 客室の境の種類
④ 採光・照明設備の具体的要件
⑤ 便所の具体的要件
B.① 客室の最低床面積
② 入浴設備の具体的要件

こうした動きは、2020年に控えた東京オリンピック・パラリンピックも意識したものでもあります。東京や大阪などの大都市では現時点で宿泊施設が不足しており、オリンピック開催時の外国人観光客の受け入れを不安視する声もあるのです。

そうした問題の解決策の一つとして、民泊が注目されています。旅館業法を改正し民泊の門戸を広げることで、より多くの訪日客を受け入れようという考えがあるのでしょう。

こうしてまとめられた改正案は、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行される2018年6月までに運用されることが確実視されています。

旅館業法の改正は民泊の追い風になる?

旅館業法が改正されることによって、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。メインとなる3つの変更に注目して解説します。

客室に関する改正


この度の旅館業法改正における大きな変化として、客室に関する変更が挙げられます。

① 最低客室数の廃止
最低客室数(ホテル営業:10 室、旅館営業:5室)の基準を廃止する。

これまでは、ホテル営業は10室、旅館営業は5室という最低客室数の基準がありました。今まではこの基準があったために、マンションの一室を民泊として運営しているようなホストは、絶対に旅館営業の区分に入ることはできませんでした。

しかしこの度この基準が撤廃され、たった一室でも旅館業として認められることになります。これにより小規模運営をするホストも旅館業を営めることとなり、その恩恵を受けられそうです。

③ 1客室の最低床面積の緩和
1客室の最低床面積(ホテル営業:洋式客室9㎡以上、旅館営業:和
式客室7㎡以上)を、7㎡以上(寝台を置く客室にあっては9㎡以上)
とする。

さらに、客室の最低面積も緩和されました。これまで洋室は9㎡必要でしたが、ベッドがない場合は和室同様7㎡でも認められるようになります。

設備に関する改正


客室に設備に関しても、大幅な緩和がみられました。

② 洋室の構造設備の要件の廃止
洋室の構造設備の要件(寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をか
けることができること、客室と他の客室等との境が壁造りであること)
を廃止する。
⑤ 暖房の設備基準の廃止
ホテル営業の施設における暖房の設置要件を廃止する。
⑥ 便所の設備基準の緩和
適当な数の便所を有すればよいこととする。

客室が洋室として認められるには、寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をか
けることができること、客室と他の客室等との境が壁造りであることという3点を満たしていなければいけませんでしたが、これが緩和されました。さらに、暖房がない部屋でもホテル営業が可能となります。

そしてマンションなどの物件を民泊として運営するホストのネックであった、トイレの設置数も緩和されました。必ず2つ必要だと決められていましたが、適当な数があればよいとされました。「適当な数」という曖昧な表現ですが、一般的なマンション・アパートのように一室に一つ備わっていれば、不適切だと判断されないと考えられます。

玄関帳場の基準を緩和


玄関帳場、いわゆるフロントに関するルールも変更されています。

④ 玄関帳場等の基準の緩和
厚生労働省令で定める基準を満たす設備(ビデオカメラによる顔認証
による本人確認機能等のICT設備を想定)を、玄関帳場等に代替する
機能を有する設備として認めることとする。

もともとはフロントの設置が必須でありましたが、この度その義務が廃止になりました。代わりにビデオカメラなどを使い、ゲストの顔認証を使う方法が考えられています。旅館業法が制定された戦後では考えられなかったテクノロジーの進化に、法律がやっと追いついた形だといえるでしょう。

ただし、下記のような対応が必要となります。

の基準を、以下のとおり定める。
① 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする
設備であること
② 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との客室の鍵の適切な受け渡し及び宿泊者以外の者の出入りの状況の確認その他善良の風俗の保持を可能とする設備であること。

この2点さえ守れば、ICT設備での代替が可能です。

簡易宿所営業による民泊営業も視野に!ただし自治体ごとの条例にも注意を

賃貸と民泊、収益を得やすい方法で運用を

今回の旅館業法改正が施行されれば、簡易宿所営業の許可は以前に比べて取得が容易になります。簡易宿所営業の許可を取得すれば、一般的なマンションなどを民泊物件として用意できるため、上手く集客できなかった物件を民泊物件から賃貸物件として運営を切り替えることがあげられます。

オーナーにとって収入の切り口が増えるのは安心材料ですし、黒字計上する物件が増えるのは、安定した収入が見込める物件が増えることは不動産投資に携わる方にとっても朗報です。こうした背景から、今後は民泊専用マンションの人気が高まると考えられるでしょう。

実際に、一足先に規制緩和が進んでいた民泊特区・大田区では、京王電鉄のような大企業や不動産管理を行うシノケンなどが民泊専用マンションの運用を始めています。福岡でも同様の動きがあり、旅館業法改正が施行された後はより活発化していくと思われます。

また、今回の改正では、ルールの緩和だけではなく罰則の強化も図られています。

(1) 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限規定の措置を講ずる。
(2) 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3万円から100万円に、その他旅館業法に違反した者に対する
罰金の上限額を2万円から50万円に引き上げる。

今回の改正は違法民泊を淘汰するという意味合いも込められているので、このような内容も盛り込まれたのでしょう。ただ、法律に則った運営をしていれば何の問題もありません。

簡易宿所営業を考える際は各自治体の条例の確認も忘れずに

簡易宿所営業による民泊営業を考える際にもう一つ注意しなければならないのは、各自治体の旅館業法に関わる条例です。旅館業法にも民泊新法と同様に各自治体ごとに条例が定められています。

例えば、現時点の新宿区の条例では、玄関帳場については以下のように決められています。

第8条 旅館業法施行令(昭和32年政令第152号。以下「政令」という。)第1条第1項第11号の規定により定める構造設備の基準は、次に掲げるとおりとする。

(1) 宿泊者の利用しやすい位置に、受付等の事務に適した広さを有する玄関帳場を設置すること。

上記のように、条例で玄関帳場について指定を行っている自治体もあり、実際に民泊の運用を考える際には自治体ごとに条例がどのようにさだめられているか確認を行うことが必要です。23区ごとや政令指定都市ごとによっても、この条例は大きく異なります。

各自治体の民泊に関する条例について、最新情報をこちらに掲載していますのであわせてご確認ください。

Anna79
民泊をやってみたいけど、わからないことがわからない。そんな民泊ビギナーの方でも理解できる、わかりやすくベーシックなコンテンツを作成します。物件選びや法律関係、集客についてなど、広いテーマで情報をご提供します。